Binary Diary

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『漫才過剰考察』を読んで

どうもこたにんです。

 

読書感想記事です。

 

『漫才過剰考察』とは

『漫才過剰考察』は、漫才のコンテストであるM-1グランプリにて、2023-2024年と史上初の連覇を成し遂げた漫才師「令和ロマン」の髙比良くるまが書いた本。

内容はとにかく漫才について言語化されたもの。

特にM-1グランプリを軸に、過去の大会から現在までの変遷や東西文化の違い、漫才のフレームやファンについてなど、漫才を取り巻くすべての環境に対して考察をする本。

 

連覇のかかったM-1グランプリ2024の予選期間中に発売されて漫才界隈で大いに話題を呼んだ本作品。

発売されたことは認識していましたが、いやはや本当に連覇されて感動したので、どこまで言語化されているか気になって買って読んでみました。

 

私自身は、漫才に対しての解像度は高い方で、特にM-1グランプリの解像度が高く、大会は初代から全部見ています。

漫才師のネタも結構覚えている方なので、誰がどういうテイストのネタをするのか、あのときこういうネタをした、とかは脳から引き出せます。

漫才に対する強い持論はないですがマイクの前で面白ければなんだっていいじゃん派なので、2020年の論争においては肯定派に入ります。

という、漫才解像度の人が読んだ感想だと思ってください。

 

『漫才過剰考察』の感想

ノンストップで2時間読み続けた直後の感想。

いや、凄すぎるわ。

 

今まで年に1回のお楽しみ賞レースと思って見ていたM-1グランプリが、ただの年末特番ではなくて歴とした大会であることを強く感じた。

冒頭、くるまがなぜM-1の虜になったのかからはじまるのですが、そこからの全ての漫才に対する言語化が本当に凄い。

この年のM-1は誰がどの順番でどういうネタをして、そのネタはこの時代的にはこれがこうで〜、と。

1つ1つのネタ、漫才師だけでなく、出場者全てがストーリーとしてつながっていると。

だからこの年はこういう結末を迎えたんだと。

漫才師ではない素人にも納得感を抱かせるほど明晰に論理的に言語化されている。

 

「20xx年の誰々の◯◯というネタが〜」のように、具体的な漫才師の名前とネタの名前が出てきて解説されるのだが、当時の情景を思い出すのと同時に、そのときに視聴者としては感じ得なかった背景までもが彩られる。

M-1グランプリにはこういった楽しみ方があるのかと、新鮮な気持ちにもなった。

 

「オリンピックの決勝戦すごかったよね」というオリンピックの楽しみ方だけではなく。

その選手が何を得意としているのか、会場はどこで気温はどれくらいか、お客さんの入りは多いか、全体で何番目に演技するのか。

そういった、ひとつの種目だけでなく周囲全ての環境に目を向けて楽しむ感じ。

漫才も、マイクの前で繰り広げられる4分間のネタだけでなく、その前後の出演順や、当日のお客さんの温かさ、その1年の笑いの感度など、多角的に見れば見るほど楽しさが増えていく。

この感覚を覚えられることができた、くるまの言語化のおかげで。

 

また、本書でたびたび引用される「霜降り明星(2018年チャンピオン)」のツッコミの粗品との対談もこれまたすごい。

くるまの言語化異常性を、同業である粗品が対面で掘り下げていく対話。

粗品の笑いのセンスの凄さも感じつつ、その異常性がより強く出ている対談でよかった。

 

で、この本の何が凄いって。

言語化だのなんだの言ってるけど、ノンストップで読み切れるくらい、面白いんだよね。

この本がひとつの漫才になっているかのように、笑って読めるんだよね。

ノンストップで読み切れるというか、途中で止めたくないというか。

感動と笑いで読み切れました。

 

まとめ

令和ロマンすごかったな〜、という記憶があるうちに読んだ方が良い。

すごさの累乗するから。